初観戦というブックを書いたのは誰だ!

僕が一番好きな女性マンガ家は?と問われたら、吉田秋生とどっちかを一瞬悩んで、岡崎京子と答えるだろう。実際先月もオークションで購入したばかりである。だけど、これにルックスを加えると魚喃キリコが俄然ランクを急上昇する。マンガ家の評価に容姿を加えるとは何事か、と憤りを感じる方もいらっしゃるだろうが、僕がそういう生き物だからというしかない。さらに、そこに文章の魅力を加えるとなるとやっぱり杉浦日向子がトップに躍り出るのである。そりゃ岡崎京子の書いた文章も好きなんだが・・・という話はさておき、杉浦日向子の書いたものだって、あんまり好きでないものもある。
例えば

東京イワシ頭 (講談社文庫)

東京イワシ頭 (講談社文庫)

なんて、書店で見かけるたびにパラパラと立ち読みしては“また今度”とやってたもんだから、やっとこさ買ったのは発売から10年以上たってからである。そんでもって、買ったは良いがなんだかすぐには読む気が起きずに本棚に直行させてしまっておいたので、頁を初めて開いたのはほんの数ヶ月前のことである。それも最初の数エピソードで飽きてしまって本を閉じてたので、昨日初めて本の終盤の方に「女子プロレス観戦」というか「アジャ詣で」の回があるのを知ったのである。
そこで彼女はこんなことを書いておる。

女子プロレスは初めてだが、男子のは、やっぱり「小説現代」の取材で、一度見た

そうかぁ、女子プロ見るの初めてかぁ、そうだねぇ、ひなぽんとプロレスってあまり接点なさそうだもんねぇ、と危うく納得しそうになったんだけど、1ミリ秒もしないうちに

業界の濃い人 (角川文庫)

業界の濃い人 (角川文庫)

を思い出した。この本にはいしかわじゅんは武道館でのクラッシュ対決を隣の席で観戦した後に、段下の喫茶店でプロレス話を一方的にかましたってことが書いてあるのである。『東京イワシ頭』の方は、モンスター・リッパー、井上京子といった名前が登場するし、挿絵の二人はおそらく豊田真奈美と山田敏代だと推定されるので、クラッシュ引退後の91年ごろのことなんで、明らかに『業界の濃い人』より後のことなんである。


ここで、杉浦日向子を嘘つきと非難するのは間違ってる。プロレスを八百長だといって難癖つけた気になってるようなもんである。この『東京イワシ頭』は新米編集者と杉浦が「初体験」するってな趣の本なんである(よー読んでないけどそう感じた)から、ここは「初めて」と書かなくてはならないのである、というかそう書いた方が断然面白いに決まってるのである。
ということで、この買い以外はあんまり読む気も起らん『東京イワシ頭』も僕のランキングを変更させるには至らなかった。