いつかキャバキャバする火


先日『不連続殺人事件』『野獣死すべし』の帯がほしくて買った文庫本セットに混ざってたのが


いつか、ギラギラする日々 (1981年) (集英社文庫)

こんな風におまけやついでが当たりだった時の喜びはとても大きい。


この『いつかギラギラする日々』とは、詳しくはいつかギラギラする日 - Wikipediaを読んでほしいんだけど、『プレミア日本版』02年11月号の古澤氏すの

へえ、何をやるのって聞いたら、3本をやるんよ、と。一本は横溝さんの『犬神家の一族』、もう一本は、赤江瀑さんの『オイディプスの刃』、もう一本は深作(欣二)さんに頼んで脚本書いてもらう『実録・共産党』だ、と

てな発言での『実録・共産党』のタイトルに、ハルキがこの本のタイトルを使おうとして、その後紆余曲折を経て、

いつかギラギラする日 [DVD]

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となったという因果な小説。
小説自体は40頁ちょっと短編で、当然のことだが『実録〜』っぽい「闘争」「弾圧」「32年テーゼ」なんていうクソ重いテーマだとか、『〜する日』の「強盗」「逃走」「追跡」なアクションだとかとは全く無縁の、単にジャズ好きの小説家が、とあるトランペッターのライブにむかついて店を出て、道端でトランペッター志望の若者の立ち話して、
その後花園神社付近の2件のバー(かたっぽが「失業中の映画監督が嫁にやらせてる」ってないかにもな店)でグダグダしゃべってるてなもの。
上に上げた三つのうち松田優作主演で動き始めた『オイディプス〜』一旦ポシャッた後に、数年後に古尾谷雅人主演で完成させたように、ハルキはおそらくその3本を諦めておらず、その火はハルキの胸で焼けぼっくいのようにボソボソと思えていたに違い。だからこそ、そのタイトルでなく「ジャズ」というテーマを扱う

を監督としての三作めに選んだのではなかろうか。

完成した映画『キャバレー』は金をそれなりにつぎ込んだそれなりにゴージャスなセットであるが、当初は案外こじんまりとしたつくりを目指したようで、脚本を担当した田中陽造は『シナリオ キャバレー』で

キャバレーはせいぜい横浜の場末のつもりだったし、ケイズ・バーにいたっては、ほとんど新宿二丁目の気分で書いた。つまり、ライターとカントクのイメージがずいぶんへだたっていた

と、「イメージの違い」を強調してるけど、何の打ち合わせもなしに「決定稿」まで上げるとも思えないので、案外僕の推測は間違ってないのではと思う。でも、そんなこじんまりしたPGタッチの小品こそ監督と主演俳優の力量が必要で、ハルキと宏伸ではそれはムツカシイ・・・なんて思慮がハルキにあったはずもなく、『愛情物語』でもそれほど重要と思えないミュージカルシーンに金をつぎこんだように、一度燃え上がってしまった火は少々の水をかけたくらいで消えるはずもなく、俺様が撮る映画のキャバレーがしょぼくてたまるかってことになってしまったのだろう。
やっぱりハルキはハルキだ。