祝われた夜(仮)

吉田豪は「地獄に堕ちたパンク・マンガども」*1でロックを描いたマンガを散々罵った後に「真にパンクな方法論を用いた漫画を鴨川つばめの「マカロニほうれん荘」と江口寿史「すすめ!パイレーツ」だけだとちょっとだけ遠慮しながら言った。
そんでもって、その片方の巨星である江口寿史は「BSマンガ夜話」の「マカロニほうれん荘」の回(2002年8月5日放送)で、鴨川のことを訊かれてこう答えている。

この人が「マカロニ」描く前に読みきりで一本描いてるんですよ。「呪われた夜」というのを。それ月刊チャンピオンかなんかなんだけど。それを俺が赤塚賞の作品を書いてるころに本屋で立ち読みしたら、すごい同じようなことをさきにやっているって、すごい焦ってですねぇ。いつも後を追っているみたいな印象が最後まで・・・

江口の赤塚賞の作品というのは「「8時半の決闘」*2のことで、この漫画では既に後の「パイレーツ」のメインキャラクターである犬井と猿山が登場しているのであるが、「呪われた夜」も幕末の京都を舞台に「新鮮組」を描いた作品で、「マカロニ」の三人の原型が主人公なのである。



掲載誌は「月刊」ではなくて「週刊少年チャンピオン増刊4月15日号」で、掲載順は「春の新作映画徹底ガイド」*3山上たつひこがきデカ」「快僧野ざらし」(一挙96頁!)、誌上封切り館(新作映画のコミカライズ)『怒りの山河』(土山しげる)の次という、あきらかに編集部の期待を背負ったものであることがわかるものであった。

この年の4月から平幹二郎の近藤、古谷一行の土方、草刈正雄沖田総司という布陣(何だかあとの二人は・・・)での『『新選組始末記』が放映されおり、その放送前に間にあわせたということなのかもしれないが、まあそんなドラマの緊迫感とは当然関係なく(執筆は放映前だから)、「マカロニ」が「マカロニ」たる所以のハードロック・兵器・怪獣・乙女こんどーちゃんetcのギャグがマッハビートで展開した後に、唐突に「映画特集」にあわせたと思われるオチ*4で半ば読者を置いてけぼりにするのだが、おそらく僕を含めた日本中の多くのガキがこの疾走に必死についていこうと思ったはずである。


単行本未収録で読むのが非常に困難なのが本当に悔やまれるとはまさにこの作品と「激殺福岡拳」のことをいうのだろうな。

*1:

クイック・ジャパン (Vol.8)

クイック・ジャパン (Vol.8)

*2:『すすめ!パイレーツ』JC第1巻収録。巻末のはアレはツービート

*3:『ロッキー』『愛の妖精アニー・ベル』『キャリー』『パニック・イン・スタジアム』『グレート・ハンティング3』なんていうちっとも子供向けとは思えんラインナップ

*4: