超人ハルキ(仮)はゲージュツ家でモテモテになりたかった。
- 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
- 発売日: 2004/09/24
- メディア: DVD
- 購入: 2人 クリック: 11回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
それにしてもである。当時やたらとTVで流れてたローズマリー・バトラーの主題歌がこれまた劇中でやたらと流れるのであるが、その歌を歌ってるのがMIEや麻倉未稀あたりに聴こえてきて、金のかかった大映ドラマとしか思えんようになってくる。そもそも、その金のかけ方がなんか変。主人公の北野晶夫ったら私生活にそんな金かけんとレースにもっと金使えよ。クルー少なすぎだろみたいなツッコミが映画の予算配分そのまんま当てはまってて、レース場でのシーンに日数割いてないんで、レースでのレーサーやクルーの細かい心理描写やはらはらするようなレース展開が見せれてない。昨今の説明台詞オンリーのTV局映画もどーにかしてるが、レースの状況を表す会話がもっとあってもいいだろう。そんでもってYAMAHAとがっちりタッグをくんでるもんだから、HONDA、KAWASAKIがいないなんて!、これがホークスの内野だったら!と考えたら冷や汗が出てきたくらいである。
そんなこんなでちーーとも「汚れた英雄」の「汚れた」部分が伝わってこず、今でいったら伊勢谷友介が演じればぴったりな薄っぺらな主人公になっちまってて、これでは同じ大薮春彦原作、丸山昇一脚本の『蘇える金狼』『野獣死すべし』も、草刈正雄主演『復活の日』も台無しである。いやー自分製作の名作を踏みにじるハルキってステキ。
まあそんな野暮なツッコミはさておき、この映画ではいろんなハルキの「なりたい(I wanna be )」が見えてきてとっても楽しい。
超人になりたい。
近年「超人」を自称しているハルキ(参考:“超人”角川春樹 日本の暗部に挑む!! 「おれが『笑う警察』を撮ったワケ」|日刊サイゾー)である。この映画時点ではまだそれは「超人志向」に過ぎなかった。ナポレオンとヒトラーに憧れているからデスラー総統で有名になった伊部雅刀を起用するのまではいいとして、ライバルチームのメカニックで中田博久が、パーティ客の一人で団次郎が、アダムスカンパニー(モナコの富豪女性の会社)の重役で黒部進が登場するのって、どんだけ「ウルトラ」になりたいんだってなワンマンキャスティング。長身、ハーフ(しかも父親は戦死)の草刈正雄と団次郎が対峙(といっても木の実ナナの取り合い)するシーン以外はこれといった画面効果を生んでないのが清清しい。たぶん森次晃嗣にもオファー出したんだろうし、篠田三郎は間違いなく断ったに違いない。まあ、そこまでして超人になりたかったんである。
芸術家になりたい。
もう必要以上に絵画だの彫刻だのオブジェだのが登場するんだけど、これももうもろに角川書店発の池田満寿夫『エーゲ海に捧ぐ』へのオマージュというか嫉妬というかである。
だがしかし、『復活の日』でオリビア・ハッセーから垂直落下式にグレードダウンしてどーするといいたくなるほどアダムスカンパニーの切れ者女経営者役のレベッカ・ホールデンに華がなく、さりとて『エーゲ海に捧ぐ』的なゲージュツにはなりえてないんで、悲しいかな同じく外国人女優をヒロインに起用した
『さよならジュピター』『ベルサイユのばら』方面に近づいてしまった。
モテモテになりたい
そんなハルキの「モテて願望」が炸裂してはいるのだが、晶夫をめぐって争う女性ってのが木の実ナナ、朝加真由美、レベッカ・レイボーンじゃあねえ、である(三人が次々とポルシェ、ベンツ、プレイベートヘリでサーキットに駆けつけるシーンは苦笑もん)。なぜなら、それに参戦してない*2浅野温子が断トツでフォトジェニックというのだから。これじゃまるで自分になびかない女が一番美人といってるようなもんだ。
んで、それは製作者側も充分承知していてのかパンフの表紙は正雄と温子。
確かこれ当時ポスターやチラシにも使われていて、はっきりいって詐欺っちゃ詐欺なんだけど。どうしてそんな大事なことをキャスティング時点で気づかなかったんのか、そっちのほうが不思議である。
こんな個人の願望だけで映画を撮れるポジションに立ったハルキはやっぱり偉大な超人なんである。