なんでジャンヌ像は微乳なのか
代表的なジャンヌ像の一つである「シャルル7世の戴冠式のジャンヌ・ダルク」も、吏員(エシュヴァン)系ジャンヌ画像も(それから竹下節子『ジャンヌ・ダルク 超異端の聖女』旧カバーに使われている『戦いの衣装のジャンヌ・ダルク』も)、平たい胸、締まったウエスト、豊かなお尻という点で共通している。
高山一彦『ジャンヌ・ダルク』(岩波新書)の第2章の1「ジャンヌ画像の変遷」によれば、乙女ジャンヌの姿を確実に伝える画像というものはなく、すべてが後世の創作なのらしい。創作ってことはその作者もしくは注文者の「乙女像」が反映しているといってもいいはずである。
※生前に描かれた画像に関しては、この「落書き」を描いた高等法院書記がジャンヌが「実用的な衣服を好むことを知らない」ゆえに「婦人服を着た髪の長い娘」*1として描いた、全くの想像の産物らしい。
だから実際のジャネットの胸が慎ましい大きさだったかどうかはわからないのである。
※ジャンヌの着てた鎧は彼女の身体に合わせて作られたので、同時代に実際にジャンヌを目撃し、正確に写実した、その手の絵が残されていたら別なんだけど、ないそうなんである。
ただ、この手の聖女/魔女な人はあんまり食事を摂らない傾向にあるんで、ジャンヌもスレンダーだった可能性は大きいと思う。
でもって、同時代でそんなおっぱいの対極にあるのが『乳房論』の表紙*2を飾ったフーケ『聖母子』のモデルといわれているシャルル7世の愛妾アニエス・ソレルのおっぱいである。それはまさに
中世にでき上がった乳房の基準はルネッサンス期を通じても変わらなかった。小さく、白く、リンゴのように丸く、引き締まって型崩れしておらず、左右は両端に離れているものが良しとされた
(『乳房論』第2章「エロティックな乳房」))
ってなものだ。でもってこのおっぱいは(現代日本ならさしずめ真木よう子的な)「けしからんおっぱい」だと教会関係者その他の道徳にやかましい人に糾弾されたそうだ(まあ、怒らしたのはおっぱいの形そのものではなくて、着てる服の露出の多さなんだけど)。
だもんだから、その後のジャンヌ像のおっぱいがしっかり布で覆われており、その存在を主張するような(エロさを強調するような)大きさになってないのはそのあたりの意識が働いているんではないかと思う。
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