じゃあ、寺田を褒めればいいか
ということで
の深田恭子りんのドロンジョ様の衣装について、おとといカール・トムズ(『恐竜100万年』衣装デザイン)を褒めたように、今回の映画のキャラクターデザイン・リファインの寺田克也を褒めればすむかというと、そうではないと思う。
まずは吉田竜夫・天野嘉孝を讃える
昨日「お色気の系譜」といったものの、実はモモレンジャーはその名に桃のみならず股の意味が籠めてあるにもかかわらず変身後には「もも」が露出していないのだ。その点変身後もハイニーのタイツをはいて股を露出しているジュンとは違う。当時の素材や技術の問題なのかもしれないが、実に惜しい。
それにしてもあの衣装である。タツノコプロの公式を見たところ、それ以前の女性キャラはスカート、パンツ(パンタロン、ホットパンツ)で、ボディスーツは前作『タイムボカン』のマージョが初となる。おそらくマージョの衣装の発想は『プラン9アウタースペース』*1のヴァンパイラあたりの吸血鬼や魔女であろうし、ドロンジョは―Wikipediaではミレーヌ・ドモンジョや(忍者などが)消えるという意味の"ドロン"が強調しているがードロンボー一味ってことなら、とにもかくにも「ドロボー」であろうから、衣装にはやはり「ドロボー映画」の金字塔
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何よりジョン・ウイリーを讃える。
今回のふかきょんドロンジョ様の衣装は、アニメ版より「女王様」が強調されている点にあると思う。
にしおかすみこを例に出すまでもなく、お茶の間にもこの「女王様」ファッションってのは定着しておるわけだが、ここに至るまでには長い長い女性の体と「補正下着(ファンデーション)」との苦闘の歴史があったことは、マリリン・ヤーロムの『乳房論』*2第6章「商品化された乳房」を読めばいい。その中で「ジャン・ポール・ゴルチエがデザインした円すい状のブラの効果が大きいが、マドンナは下着を外出着に変えた功績がある」とある*3。おそらく、このマドンナの成功がなければ『バットマン・リターンズ』*4でのキャットウーマンの衣装もあそこまでビザール趣味になってなかったかもしれず(米国テレビ版のキャットウーマン、ジェリー・ニューマー*5や旧作のリー・メリーウェザー*6の衣装と比べて欲しい)、今回の『ヤッターマン』という日本の子供向け実写映画の衣装に採用されることもなかったはずである(その前に原作のレオタードから強引に変更された『キャッツアイ』*7なんてのもあったけど(ト)。
そんでもって、北原童夢の「ボンデージとフェティシズム」*8は、この80年代終わりから90年代初頭にかけてのフェティッシュな感覚は、「ドレッシング・フォー・プレジャー」を提唱したジョン・サトクリフが素材としてラバー(ゴム)に目をつけ、それを上記のゴルチエやヴィヴィアン・ウエストウッドらが取り入れることで広まったとしている。
その北原の文章で「ボンデージ・フェティッシュ」の祖とされているのが、『ビザール』誌の主宰者ジョン・ウイリー*9なのである*10。彼が描いた「スウィート・グウェンドリン」シリーズが今回のふかきょん衣装につらなってるのは間違いない。彼が幾多の弾圧迫害にも負けずに(多少負けたのかも)貫いたビザール愛が2009年の春に花開いたのである。
(参考:ビザール系ファッション素材のいろいろ)*11
ジョン・ウイリー偉い!
…ひとまず、今回ティム・バートンは褒める必要ないっしょ。
*1:
*2:
*3:8日の日記で触れたランナウェイズのシェリー・カリーの場合は単にキワモノ扱いだったのでフォロワーが現れなかった
*4:
*5:Julie Newmar on IMDb: Movies, TV, Celebs, and more... - Photo Gallery - IMDb
*6:Lee Meriwether on IMDb: Movies, TV, Celebs, and more... - Photo Gallery - IMDb
*7:
*10:同じ北原童夢の「サディストは二度死ぬ 明智伝鬼と戦後日本のSM史」『別冊宝島146変態さんがいく』によれば、5年もたたずに、ボンデージは『奇譚クラブ』によって日本に紹介されているらしい