あまりに84年な"そこまでー"

すげーひさしぶりに映画ジャケ本をゲットした。


薬師丸ひろ子主演のハルキ映画でいえば、長澤まさみで『セーラー服と機関銃』が、全く別物とはいえ菅野美穂で『Wの悲劇』がリメイクされたし、『探偵物語』に関しては川島海荷志田未来あたりでいつリメイクされてもおかしくはないのに対し、こと『メイン・テーマ』はそうはいかんだろう、という気がする。これはこの映画があまりにもあのころの映画、あのころの薬師丸ひろ子主演しかなしえない(別にしたいと思わないだろうけど)映画だからだと思う。
そんな中でいっちゃんあまりに「あのころ」ってなのが

桃井かおりとキスしてる野村宏伸薬師丸ひろ子
"そこまでー"
と叫ぶシーンだと思う。「ヤメロー」とか「はなれろー」とかではなく「そこまでー」ってのが、おそらくあのころの薬師丸ひろ子じゃないと口に出せない台詞。ちなみにシナリオ段階ではここは

 伊勢の口唇にキスする大東島。
 伊勢の髪の毛がそよぐ。
 大東島が、伊勢の腰を思いきり抱く。
 口惜しそうなしぶきの表情。
しぶき「あーーーー!」
*1

となっていてるんで、現場もしくはリハの段階での台詞変更なんじゃないかと思うんだけど、たぶん薬師丸ひろ子独特の優等生キャラを以てして初めて可能となるこの台詞を搾り出した森田芳光ってのも本当にすごい。


すごい!といえば野村宏信ったら、この映画での桃井とのキスシーンの次は『キャバレー』では賠償美津子との濡れ場が待ってた。デビュー早々かの松田優作にドラマの収録現場でブチキレて結局非を認めさせた桃井とアントニオ猪木と結婚していた賠償妹なんていう、モンスター級の女優と文字通り絡みながら、その後俊ちゃんに榎本呼ばわりの子分役に甘んじたところである。


そういえば『キャバレー』も『恋人たちの時刻』もリメイクは絶対にないな。