さらなる美妹の受難

瑠璃の爪 (あすかコミックス)』収録の「木花佐久夜毘売」。
常世長鳴鳥」と「瑠璃の爪」に続いて*1の姉妹の相克ものだが、ラストが上京する男といっしょの「列車」に乗ってといった中途半端なハッピーエンディングなんで、気の抜けたダイエットコーラというか人を斬り刻まない栗山千明という残念な読後感。
そのどっかふわふわしているラストもそうなんだけど、小さめなコマの典子の絵に岩館真理子が混ざってるようなが気がしてどーも落ち着いて読めなかった。
*2
おそらく、「グレた」少女を描く際に『花のあすか組』にしたくなかっただろうのか、「カワイイ」をミックスさせようとしてるのに若干失敗してるような気がする。木花佐久夜毘売のカットの決まり具合との明らかな落差を感じてしまった。


それにしてもニニギってひでーよな。自分が見初めた美人をもらい行って、贈りもんといっしょにくっついてきたブサイク(凶醜)な姉を突っ返すってーの。7世紀の東アジアで自分の国をアイデンティファイするために物語を創作した人たちはともかく、19世紀末の世界で「近代国家」をこしらえなくちゃいけない人たちがよくこんな話を取捨しなかったもんである。ちょっと興味がでたんで岩波文庫の『古事記』を買ってその部分を読んでみたら、もっとひでーでやんの。
自分でハラましておいて「此胎必非我子」って難癖つけるとは!


ということは典子はこの後望通り「佐久夜毘売」になれたとしても、も1回試練が待ってるんだってことやん。
恐るべし山岸凉子、恐るべし少女マンガ。

少女マンガ恐るべしといえば

NHKドラマ『派遣のオスカル〜少女マンガに愛をこめて』第5回「オスカル、裏切り?」*3で、鈴木杏演じるかけだしの少女マンガ家の俵あんが、オタク然として頭の悪いオトコのマンガ家に少女マンガをバカにされてムカつくという、NHKらしくないかもしれないシーン(こいつらの少女マンガ観があまりに浅薄だった)があったんだけど、まあ作家名なり作品名なりだして反論すれば一発なんだろうけど、池田理代子の手前「24年組」を出すのも憚られたんだろうし、吉田秋生を出すのはそれはそれで、だったんだろうなァ、脚本の金子ありさにとって。

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そういえば典子といえば

このマンガの発表が2、3年早ければ「典子」って名前は

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『積み木くずし』の主演女優で「角川」三姉妹のひとりである渡辺典子由来だといっても良さそうなんだけど、まあおそらくなんら関係ないはず。
たーだ、この作品が雑誌「ASUKA」6月号に掲載されたのが、ちょうど典子さん最期の角川作品『キャバレー』の公開時期と重なっているのは興味深い。
んで、その年の7月に

の初版が発行されるものの主役降板、角川離脱って流れを予言してたのかも、とか思ってしまう。

*1:単に僕が続けて読んだだけだけど

*2:『瑠璃の爪』143頁

*3:http://www.nhk.or.jp/kindora/haken/html_haken_story05.html