スローなブギなんてできん、できんもんはできん!


フジテレビのトレンディドラマ「抱きしめたい!」より7年も前に「W浅野」*1が共演した(まあこの浅野裕子と浅野ゆう子は赤の他人だけど)角川映画が『スローなブギにしてくれ』である。公開順で言えば『野獣死すべし』と『魔界転生』の間。

原作者の片岡義男Wikipediaによれば「植草甚一らと共に草創期の「宝島」編集長としても活躍」したり、「1970年代後半からは「ポパイ」をはじめとする雑誌にアメリカ文化や、サーフィン、ハワイ、オートバイなどに関するエッセイを発表」したりした、いわゆる「シティボーイ」のカリスマ的存在だった人。
そんな人間と上記の二つの映画を並べてみればどーなるかは判ってるはずである。まるで『イースタン・プロミス』と『エグザイル/絆』の間に「赤い糸」を同じ会社がつくろーって言ってるようなもんだ。
巻末で脚本の内田栄一はこう書いている。

原作に忠実にというより、片岡義男さんのフィーリングに少しでも近づけるように脚本化させていただきました。バイクを書いても海や高原や猫を書いても、すべてさすらいのシティ・ロマンとでも呼びたくなるような片岡さんのさわやかな持ち味を十二分を生かすよう努力しました。

嘘つけ!なるほど「フィーリング」「シティ・ロマン」「さわやか」ってのが、いかにも当時の片岡的である。でも、それと同時にハルキにも内田栄一にも監督の藤田敏八にも持ち合わしてないもんであった。例えば内田栄一が似合うシティとは

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みたいなもんで、片岡的なデオドラントなシティとは別な場所であった。それが同じ渋谷区内だったとしても。
で、どうなったかというと

この散文的な内容では映画化が難しいと戸惑う二人に、角川は異常にハイテンションな様子でこう言ったという。
「原作通りになんて、やらなくてもいい!」
そこで二人は、自分たちの世代に近い脇役の「ムスタングの男」の、もう終わってしまう青春の挽歌をテーマに『スロブギ』を完成させ
「幻の二代目角川娘 浅野温子*2

てしまうのである。もう、それはキャスティングに如実に表れていて、浅野温子のほかは山崎努 古尾谷雅人 原田芳雄 浅野裕子 竹田かほり 室田日出男伊丹十三春川ますみ、浜村純、石橋蓮司、宮井えりなってな調子でとてもさっきの三つのフレーズには当てはまりそうにはないメンツである。古尾谷にしたって前後の代表作が『女教師』『人妻集団暴行致死事件』『丑三の村』・・・そして何はなくとも

なんだもん。そんでもってそんな古尾谷演じるゴローは作業服の男たち(高橋三千綱和泉聖治)にレイプされたさち乃(浅野温子)に対して「汚ねー」と罵った後にいうセリフが

「抵抗できなかったのかよ。大声上げるとか何とかして・・・」

「殺されても抵抗すべきだったんだぞ」

・・・絶句。
まあそのあとゴローは町に出て弱そーな少年(ゼロハン)をぼこったり、別の少年(革ジャン)にぼこられてたりして犯人を捜すけど見つからない。ところが、犯人の方からさち乃が勤めてるスナック・クイーン・エリザベスにやってきて、さあ大変犯人ふたりはその場から慌てて立ち去るんだけど、マスター(室田)が連れの男をしめて居場所聞き出して、ゴローが二人二けじめをつけるってな展開。
これってどー考えても片岡への嫌がらせだよね。



ちなみ僕は「片岡義男」的なもんが大嫌いだったんで、当時(テレビ放映も含めて)食わず嫌いで見てなかったんだけど、この文章書きながら俄然見たいなぁと思ってきたところである。
※オンラインで調べてみたところ、近くのビデオ屋には置いてない…レンタルアップのVHSでもさがそーかな!

*1:何度でも言う、ダブルの頭文字はD

*2:

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