通天閣 うちとおかんと何より実夫 

あるいは田中登監督、ばんざい!!!!

(秘)色情めす市場 [DVD]

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柳下毅一郎先生の『貸し間アリ』への「これ、『めぞん一刻』だよなあ。というよりは、『めぞん一刻』はこのように映画化されるべきだった」を借りれば、
これって『ぼくんち』だよなあ。というより『ぼくんち』はこのように映画化されるべきだった、である。
芹明香の存在感の圧倒的なオンリーワンぶりがすごい。それに比べれば、しょせん大泉洋オダギリジョー萩原聖人は所詮とっかえの効くものたちだ*1。ついでにいうと『失楽園』の黒木ひとみと川島なおみだって、そうだ。あらかじめ楽園から追放されて生まれてきた者には敵わない。
芹明香の存在感の圧倒的なオンリーワンぶりがすごい。
ここまでささくれ立ってる中で、なぜ芹明香の笑顔はあんなに清清しいのだ。そして時折色味が出る彼女の肌は輝かしいのだ。
なんでこんなに緊張感に溢れた映像の連続の中で宮下順子はあんなにエッチくあれるのか、というかあんな風にエロく映し出すことができるのか。

そして、なにより実生の通天閣登頂。
映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 [VHS]』と『バーディ [DVD]』を併せてどろソースかけたような高揚感と絶望が入り混じる。実生にとって通天閣は「ホーリー・マウンテン」だったんだね、と自分を納得させるしかない。
そんな実生を交わっている時のトメはとても神々しい。うっかり「エクスタシーとは宗教的感覚だ」なんていってしまいそうだが、それはトンデモない誤りだ。
本来の「日本」の「性」は「聖」であった。それを舶来の「仏教」や「儒教」によってボンデージされ聖性を剥ぎ取られていった。それでもなお大らかさを失わなかった日本の性、特に女性に対して戦国時代に来日したキリスト教宣教師が「なっとらん」と憤慨したのは有名な話だが、杉浦日向子たん先生でなくても"大きなお世話"なである。そして、西洋倫理観は儒教とともに明治時代に猛威を振るい今日の女性の性のあり方に非常に足かせを作った。
そんな歴史の中で京に定住していった「遊女」は辻子君と呼ばれ、蔑視されていく。トメはその末裔である。
トメが最後の最後地獄辻子から抜け出す機会をぶっちぎって、あの場所に留まるのは不思議なようで不思議じゃないから不思議だ。

*1:といううかオンリーワンになりうる彼らにとっかえひっかえ「もこみち」でもできる役をやらせるモノドモが間違っておるわけだが。