読んでから読むか、読む前に読むか
- 作者: 町山智浩
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/03/25
- メディア: 単行本
- 購入: 190人 クリック: 9,745回
- この商品を含むブログ (119件) を見る
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2011/03/19
- メディア: 雑誌
- 購入: 21人 クリック: 590回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
待望の『トラウマ映画館』が出た。『未公開映画を観る本』*1を挟んではいるとはいうものの、映画オンリーの単著は続編が難航している*2『映画の見方がわかる本 ブレードランナーの未来世紀』*3以来である。
以前からの読者には分りすぎるほど分っているが、この本も当然ストーリーを紹介して感想を簡単に述べると言うものでなく、作品をただ見たわけでは分らない作者の意図や作品の意図が豊富な資料を元に解説してある。これは『映画の見方がわかる本』*4の「はじめに」と「2001年宇宙の旅」の章によれば
映画や音楽は絵画は、人間がつくるものである以上は、作品の表面に直接描かれない作者の意図、もしくは作品の背景が必ず存在する
(p1)
ので、作品を「わかる」ためにはそれを読み解かなくちゃいけなくて、著者がそれに挑む理由は、著者が評論家という職業であること、映画に関しては「納得するまでまで突き詰める」性分であることと
「テキストを読まないと深く理解できない芸術がある」から
(P17)
だとか。
今回の本に関しては多分に「性分」が発揮された結果なんだと思う。この性分はおそらく著者の最初期の仕事『アニメコレクション ルパン三世』(双葉社)から一貫して発揮されてきたものだ。
さて、著者が作品を読み解くために重要視しているものに、監督のインタビューやBD/DVDのコメンタリーである。だとしら、この本を読み解くには『映画秘宝』のインタビューはかなり重要なものとなるはずだ。今回の聞き手は秘宝2代編集長にして、著者をして
と言わしめた田野辺尚人。おそらく彼以外でここまでの内容をひきだし、詳細な注をつけられる人はいないはず*6である。
「映画秘宝的な映画が少ない」に関しては、確かに近年の「秘宝」的ではないにしても、『映画宝島発進準備イチかバチか号』所収の「あなたの知らない映画」*7やアーリー秘宝『日常映画劇場』*8の内容とは繋がっているので少しばかり疑問である。が、しかし、著者がこの本にかけた普通にソフトが売ってる作品ではないので、その入手には手間も金もかかっていたりとか、さして有名でない原作本や古い新聞記事を読み込むなどの「苦労、手間隙、予算」がこれでもかと分ること。また、なぜ一連の「トラウマ映画」の多くがこのようなマイナーな作品なのかということが分ることなど、このインタビューを読むためだけに「秘宝」買ったとしとも、二つあわせて2200円(税抜)は決して高いものではないと思う。
*1:
*2:http://twitter.com/#!/TomoMachi/status/28371153950
*3: 〈映画の見方〉がわかる本80年代アメリカ映画カルトムービー篇 ブレードランナーの未来世紀 (映画秘宝コレクション)
*4: 映画の見方がわかる本―『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで (映画秘宝COLLECTION)
*5: ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判〈2〉 (映画秘宝COLLECTION)
*7:月刊CUTIE5月臨時増刊 90年5月発行
*8: 日常洋画劇場―映画のことはぜんぶTVで学んだ! (映画秘宝コレクション)