読んでから読むか、読む前に読むか

トラウマ映画館

トラウマ映画館

映画秘宝 2011年 05月号 [雑誌]

映画秘宝 2011年 05月号 [雑誌]

町山智浩presents「トラウマ映画館場外乱闘変」
待望の『トラウマ映画館』が出た。『未公開映画を観る本』*1を挟んではいるとはいうものの、映画オンリーの単著は続編が難航している*2『映画の見方がわかる本 ブレードランナーの未来世紀*3以来である。
以前からの読者には分りすぎるほど分っているが、この本も当然ストーリーを紹介して感想を簡単に述べると言うものでなく、作品をただ見たわけでは分らない作者の意図や作品の意図が豊富な資料を元に解説してある。これは『映画の見方がわかる本』*4の「はじめに」と「2001年宇宙の旅」の章によれば

映画や音楽は絵画は、人間がつくるものである以上は、作品の表面に直接描かれない作者の意図、もしくは作品の背景が必ず存在する
(p1)

ので、作品を「わかる」ためにはそれを読み解かなくちゃいけなくて、著者がそれに挑む理由は、著者が評論家という職業であること、映画に関しては「納得するまでまで突き詰める」性分であることと

「テキストを読まないと深く理解できない芸術がある」から
(P17)

だとか。
今回の本に関しては多分に「性分」が発揮された結果なんだと思う。この性分はおそらく著者の最初期の仕事『アニメコレクション ルパン三世』(双葉社)から一貫して発揮されてきたものだ。
さて、著者が作品を読み解くために重要視しているものに、監督のインタビューやBD/DVDのコメンタリーである。だとしら、この本を読み解くには『映画秘宝』のインタビューはかなり重要なものとなるはずだ。今回の聞き手は秘宝2代編集長にして、著者をして

もともとオレ、『映画秘宝』を創刊したときのイメージ読者は田野辺くんだったんだよ
『映画欠席裁判2』*5(274P)

と言わしめた田野辺尚人。おそらく彼以外でここまでの内容をひきだし、詳細な注をつけられる人はいないはず*6である。
映画秘宝的な映画が少ない」に関しては、確かに近年の「秘宝」的ではないにしても、『映画宝島発進準備イチかバチか号』所収の「あなたの知らない映画」*7やアーリー秘宝『日常映画劇場』*8の内容とは繋がっているので少しばかり疑問である。が、しかし、著者がこの本にかけた普通にソフトが売ってる作品ではないので、その入手には手間も金もかかっていたりとか、さして有名でない原作本や古い新聞記事を読み込むなどの「苦労、手間隙、予算」がこれでもかと分ること。また、なぜ一連の「トラウマ映画」の多くがこのようなマイナーな作品なのかということが分ることなど、このインタビューを読むためだけに「秘宝」買ったとしとも、二つあわせて2200円(税抜)は決して高いものではないと思う。

*1:

松嶋×町山 未公開映画を観る本

松嶋×町山 未公開映画を観る本

*2:http://twitter.com/#!/TomoMachi/status/28371153950

*3:

*4:

*5:

*6:吉田豪のぞく

*7:月刊CUTIE5月臨時増刊 90年5月発行

*8:

日常洋画劇場―映画のことはぜんぶTVで学んだ! (映画秘宝コレクション)

日常洋画劇場―映画のことはぜんぶTVで学んだ! (映画秘宝コレクション)