80'S東京示キュン化石、な本

私、きっとハウスマヌカンになります。ゼッタイ。
甲田さん、あなたは私の"東京"です。
それでは、元気で、ごきげんよう

P.S. ♡♡♡♡……∞
甲田益也子さんへの手紙」
東京トンガリキッズ (角川文庫)』46頁

「お姫様、迎えにあがりました、さぁ、一番いい洋服を着て降りておいで」
それで、私は、とっておきのATSUKI・ONISHIに着替え、手すりを乗り越えてローリーの腕の中に着陸した。
「男の子たちにはわからない」
『同上』62頁

<参考:「東京トンガリキッズ」を等倍楽しく読む方法。>
80年代半ばのこの国の隅々にはこの子たちのような、ルールを決めんのは国会ではなくマガジンハウスだってな共通認識で息をしていた女の子が点在してたはずである。
そんな女の子が憧れてやまない甲田益也子と大西厚樹が合体した、まさに夢のような本が



Atsuki Onishiのニット絵本

Atsuki Onishiのニット絵本

である。絵本というのは、本の頭の方が3章あるカラーページが、それぞれ「メアリーポピンズ」「赤ずきんちゃん」「不思議な国のアリス」ってなタイトルがほどこされ、3人のモデルがアツキ・オオニシのニットを着てるってな本の作りのことを指してると思われる、たぶん。
そして、ここで重要なのは甲田益也子の他はモナ、バレリアという白人の少女だってことだ。80年代の「オリーブ」に関する山崎浩一の文章*1

まず、登場するモデルは白人少女。中にはアメリカンスクールの生徒も少なくないと思われるが、とりあえず「パリのレアール街角やブローニュの森に遊ぶ少女」を示唆する記号として登場する。日本人勢モデルの場合(略)あくまでオリーブ国に招かれた読者代表、といった風情で現れる

の「オリーブ国」をアツキ・オオニシ的メルヘンの世界に置き換えた場合に、日本人でありながら、そのまんまその場所の住人として堂々と登場することが許された稀有な存在が彼女であったということなのだろう。


それはそうと、カラーページの後には「さあ、あなたも編んでみましょう」と掲載された服を編むための解説が続いているんだけど、実際に編んだ後に自分で着てみて鏡の前に立った時に、思いっきりゲンジツに引き戻されたオンナのコもいたんだろうなぁ、と生まれてこの方「手編み」なんかと無縁な僕は負け惜しみをいってみる。

*1:

退屈なパラダイス (ちくま文庫)

退屈なパラダイス (ちくま文庫)