このミステリー雑誌がすごい!

といってもほかのミステリー雑誌をよく知らんのだけど。それでも、昨日買った

『探偵クラブ』創刊号(コバルト社)は何かとすごい雑誌だった。
名前からして『探偵倶楽部』のモジリというかパクリで、これだけでもすげー度胸の持ち主による発行であることがうかがいしれる。

「探偵倶楽部」傑作選―甦る推理雑誌〈7〉 (光文社文庫)

「探偵倶楽部」傑作選―甦る推理雑誌〈7〉 (光文社文庫)

※『理由なき反抗』のジミー・ディーン*1がワッパをぶら下げてるという全く意図が伝わってこない表紙イラストもすごい!!
そんでもってサブタイトルは「捕物と探偵小説雑誌」なのであるが。わざわざ「捕物」をベッコにする必要があるのか?ってな疑問がわいてくるのだが、特集「グラビヤ(ママ)」と目玉のラインナップを見ればなんとなく納得してしまうものがある。
発行年である1975年とは「このミス出身」で、近所の書店で全く初刷をみなかった『ダブル』の深町秋生の生年でもあるこの年は、TVが庶民の娯楽の主役の座を完璧に映画から奪い取って、既にその地位を磐石にしたころである*2。だからだろう、この雑誌ったらやたらとTVと絡むことに熱心で、そのグラビヤ「TVタンテイ大繁盛」では放映中(NHKのぞく)のその手のものをかき集めているのだが、16作品中の5作品を「捕物帳」(『同心部屋御用帳』『伝七捕物帳』『鬼平犯科帳』『影同心・夜霧の殺し節』『大江戸捜査網』)が占めてることからもその人気が無視できないものだったことがわかる。
それはそうとこの特集グラビヤ。写真の使い方が面白い。『特別機動捜査隊』で使用された写真が

後番組『特捜最前線』を使った家庭教師のトライのCMみたいってのは良いとして、『非常のライセンス』『伝七捕物帳』『俺たちの勲章』

をどかーん並べた頁の『俺勲』の写真がアラシ刑事の中村雅俊だけで松田優作が写ってないのである。巻頭がモデルのクレジットがないヌードで始まる探偵小説雑誌の読者に、『我ら青春』のゲットアップと『太陽にほえろ!』のジーパンでどっちのファンが多いかなんていうのは、別に名探偵でなくてもわかりそうなもんなんだけど、編集スタッフに鶴丸あやみたいなのがいて「主婦のカン!」で押し通しでもしたんだろうか・・・。

そんでもって「目玉」なんであるが、これが怪しさ爆発というかミステリーそのものというか、表紙では「テレビ化三大捕物」とうたって

『女奉行魔境裁き』陣出達朗、『同心部屋御用帳』島田一男、『若さま侍捕物帖』の三篇が印刷されているのだけど、そのうちの『女奉行魔境裁き』はなぜだか『尼判官魔境裁き』とタイトルを変更して掲載されているのである。

そして肝腎の「TV化」においても、他の二つが実際に映像化されている*3のに、作者が『遠山の金さん捕物帳』『伝七捕物帳』の陣出達朗でありながら未映像化という実にもったいことになっているのである。
いや、ホント、この東慶寺庵主智月尼を主人公にしたこの作品、今からでも映像化したほうが良いほどにマジですごい!ブツなのである。(つづく)