分裂をかろうじて防いだ男


「あいつ今までいつばんきれいでした」やジンさんのことは多くの人が触れるだろうから、僕としてやはり

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ことを書くべきだろう(「はるちゃん」の和田支配人も誰かにまかす)。


何度も言ってるようにこの映画は「統合失調映画」である。「統合失調」を描いた映画というだけではなく、映画自体が「統合失調」している。いわく「これは統合失調の映画ではない、映画の統合失調だ」である。
原作者伊達一行・脚本家石井隆・監督和泉聖治のベクトルが全くバラバラなために、原作の持つ80年代軽チャー風味がオミットされ、自分の過去を封じられたために人物造形がおろそかにされてしまった主人公名高達郎は、高樹沙耶土屋昌巳というドシロート二人が演じる「天使のはらわた赤い教室」の前に宙ぶらりんな状態にされる(部屋にはトラヴィスのポスターが貼られているが、初めから暴発を封印されている彼がモヒカンヅラを被ることは無い)。主人公の定まらない視線そのままに、映画自体がそのバラバラな肢体をさらけ出したままになり、あやうく分裂の危機に瀕することになる。おそらく山田辰夫演じるちょっと気弱で現実的なアシスタントの存在がなければこの映画成立していないに違いない。

(中断)