藤木の話は否定せずに最後まで聞け

臨床真理 (このミス大賞受賞作)

臨床真理 (このミス大賞受賞作)

その人を知りたかったら映画監督は初監督作、バンドは1stアルバムに接しろなんて言葉がある。最初に振り絞りだしたものには何らかのその人の本質がある、ってな話である。だから、柚木裕子にとっては処女作である『臨床真理』が彼女の何かしらを伝えてるとすれば、おそらく主人公の臨床心理士佐久間美帆が彼女の化身・分身のはずである



なんてのは文字通り真っ赤な嘘である。彼女はおそらく美帆に過剰に何かを託したりはしてない。美帆と藤木司に多くを寄せているとはいえ、作者の分身を多くの人物に分散さえているだんと思う。まあ、美帆が作者の化身だと、思わせたい方が良いこともあるかと、ここで共犯者F氏が「病院にお勤めした経験とかありましたか?」なんて質問してるんだけど、そこはそこ、あれはあれみたいで彼女はあっさりとかわしている。
だからだろう、どっか風格というか余裕を感じるというか、20年以上前にデビューしていたら、ゴールデン街で岡留編集長との2ショットが「噂の眞相」に載ったりしてたんじゃないかなんて、だからどーしたっ!てなことを考えてしまった。


でもって、ラソーにも「良く出来てるよなぁ」なんて思いながら読んでいたんだけど、ざーっと読み終わってふとその感触を思い出すと、「良く出来てる」の具合が違ってた。前半が良く出来た土曜ワイド劇場で、後半が良くできたVシネマ

相棒 pre season DVD-BOX

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*1

あ、どっちも東映やん。だったら次々回作くらいに

に続く「相棒」スピンオフ企画で、原田龍二演じる"第3の男"*2陣川公平を主人公の心理ミステリー、なんてのをやってもらえんだろうか。

こひつじたちのちんもく

宝島ついでに『別冊宝島368 身の毛もよだつ殺人事件』の平山夢明柳下毅一郎らの座談会で平山は次のような発言をしている。

プロファイリング・チームの人間が、収監中の囚人から実際に起きてる犯罪についてのコメントをもらうということは、絶対にない。だから彼女は訓練生という設定にしている。

羊たちの沈黙 (新潮文庫)

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このことが今回の美帆が精神科医ではなく臨床心理士という設定に影響しているかどうかはしらないが、本来ならギャーギャーうるさいはずの子羊たちが言葉を失っている―彩は失語症で、司はコミュニケーション不全といった点は何かしらの共通点があるのかもしれない。あとレクター/クラリスってのが高城/美帆に似てるかどうかよりタカギ・ミホって組み合わせの方が気になる。

僕が今日書いたこんな言葉はどんな色なんだろうか。

ひとまずどな色には虹色がたりない。

アルティメット ヒッツ クロノ・クロス

アルティメット ヒッツ クロノ・クロス

*1:「赤い殺人者」の方だと思ったが「アマゾン」になかった

*2:ちなみにシーズン3第6話「第3の男」の監督は長谷部安春だったりする