怪獣ってなんなん

映画秘宝 2008年 07月号 [雑誌]

映画秘宝 2008年 07月号 [雑誌]

を海苔ちゃんが買ってきた。そうえいば「週刊真木ようこ」ってHDに入れっぱなしで見てないなぁ。

そんでもってこれ何回も書いてるけど「映画秘宝」のネーミングの元は「宝島」と「映画宝庫」なんだけど、「映画宝庫」って言えば、もいっこの勝手に暖簾分けである大洋図書から出てるMOOK

をアマゾンで安く買った。太陽堂書店さんありがとうございます。
vol.1『モンスター・パニック』に比べて若干出涸らし感を感じてしまいがちだけど、逆により安ーい作品が陳列してあるのも一興じゃないか…と開いた途端に妙に「モンスター」と「怪獣」ってどう違うんやろ、という思いが。

ひとまずWikipediaを見る。

二義的には、太平洋戦争後の日本において、円谷英二らにより多数制作された「怪獣映画」や、ウルトラシリーズ(類似のテレビ番組を含む)に登場する、巨大で、強力な生物を指す(そのためか恐竜=怪獣という概念も誕生した)。最も代表的な存在はゴジラである。その多くは、近代兵器によって殺傷することが難しく、人類の科学では解明できない特殊能力(例、破壊光線を口から放射する)を持っている。
wikipedia:怪獣

ふむふむ。
ついでに英語の「Kaiju」(http://en.wikipedia.org/wiki/Kaiju)

そんでもって辞書を見ると

『大字林(第3版)』では「(1)怪しいけもの。正体のわからないけもの。(2)太古に栄えた恐竜などをモデルに創作された、超能力をもつ動物。「―映画」」。

広辞苑(第6版)』では「(1)あやしいけもの(2)映画、漫画などで、恐竜などを元に創作した特殊な力を持つ生き物」。

『新世紀ビジュアル大辞典』では「(1)正体のわからないけもの(2)想像で創作された巨大で不気味な生物。monster。」

日本国語大辞典』では「正体不明の不思議なけもの。常識では考えられない能力を持っていたり、行動をしたりする動物」

なんて書いてある。
僕らが使ってるのは概ね(2)の意味ってことは解った。
で、ここで気になったのが(1)の方。昔からあるってことはこれって漢語だよな、ってことで漢和辞典を見る。

大漢和辞典』に「不思議な形をしたけもの。奇獣。」って書いてあって、用例として『山海経 南山経』又東三八十里日猨翼山其中多怪獣水多怪魚」が載っていたので

山海経―中国古代の神話世界 (平凡社ライブラリー)

山海経―中国古代の神話世界 (平凡社ライブラリー)

を借りてくる。で、巻末の解説が水木しげる大先生なんで、あれ、これ「怪獣」じゃなくって「祅怪(妖怪)」だよね、と。
よく考えれば当然なんだけど。この辞典で、じゃなくてこの時点で当初の目的がなんだか解らなくなった。

んで

大衆文化事典

大衆文化事典

の【怪獣】を覗いてみると

国語辞典的な表現で言えば、正体の判らない不気味で巨大な獣のということになるが、『怪獣大図鑑』などには、リアルなカラー写真の他、名前の由来、分類、出身地、身長、体重から武器、弱点、足型、物語りなどが、微に入り細にわたって記されている

なんて上記の(1)と(2)を混同しているもんだから、さあ大変。いや、その「図鑑」なんてもんが罪作りことだって・・・というのはさておき、その後に分類なんてのも載ってるんだけど、これもなかなかの「なんだかなぁ」もの。普通「恐竜」は恐竜だし、シーラカンスも怪獣と呼ばないと思うぞ。
てこって、その項書いてる人の名前が「谷敬」。ガチョーーン。

ルネッサーーーンス

山海経』をパラパラめくって目に留まったのが

「海外西経」に

形天と帝がここに至って神あらそいをし、帝はその首を斬り、これを常羊の山に葬った。そして(形天の)乳を目となし、干と鉞を持って舞った

とある形天。
これって荒俣宏想像力博物館』で

ハルトマン・シェーデルの<年代記の書>(1493)より、プリニウスが<博物誌>で紹介したインドの怪民族たち

とキャプションがついてる図のひとつ

とそっくりじゃん。
ちなみにこの「インドの怪民族」はいつのまにか西インド(アメリカ大陸)に移ったと思われてたらしい。


話はそれるけど、まあこれを見ただけでも、今度こそ買うのやめよっかな - BEAT-MANgus(椣平夢若食い散らかし記)で書いた岸川なんちゃらとそのお友達の推論がアホだということがわかるね。彼が「キリスト教の影響」のみで説明しようとした現象は、やはり想像力とはったりの不足だったんだって。

ちなみにこの「形天」に限らず、現在『山海経』とタイトルのつく本に添えられてる図版は後世つけられたものらしい。
※参考山海経動物記・表紙"『山海経』の絵について"