やはり人の性はマヌケなのかも
帰宅後TVを点けるとこんなニュースがあってて腰を抜かす、低い声の男がタクシー運転手を殺すって・・・『ゾディアック』観てきたばっかりなのに。
ここで僕がゾディアックとこの事件の犯人との比較なんか始めたら、マジでマヌケな話だ。それこそゾディアック本人やフィンチャーの思う壺じゃないか。
多くの人が語ってるように、この映画はポン・ジュノの『殺人の追憶』に似ている。未解決のシリアルキラーを追う捜査陣のすっとこどっこいという構図、散りばめられたギャグ、様々な作品の引用、影響を監督へのオマージュなんてこと以上に、「性マヌケ説」に則った人間観の共通性を・・・なんて事書くこと自体が非常にマヌケなんだと思いながらもいといろと語りたくなる映画だった。
(続く・・・眠いんで一旦中止)
ハリーもポパイもコロンボも・・・ついでに鳴海昌平もいない世界
イーストウッドの近年の作品に対して「ダーティ・ハリーがいない世界」といった表現されることがある。この映画の中でも上映開場からトスキ捜査官とグレイスミスが語るシーンは、全くもって「ハリーがいない世界=現実」を映し出していた。
トスキといえば、他の警官が「スティーブ・マックイーンがキャラ作りのモデルにした」と彼を持て囃す(からかう?)シーンがある。その映画『ブリッド』のプロデューサーの一人フィリップ・ダントニはNY警察麻薬課のイーガンを題材にしたノン・フィクションを映画化する。それが『フレンチ・コネクション』で、その主人公ポパイも「汚い刑事」の一人だが、この映画にはポパイもいない。だが、『フレンチコネクション』が最初に用いて、その後パロディが繰り返され、定着した手法―登場人物のその後を字幕で説明―が当然のようにこの映画でも使われているが、まあさんざん使われる手法なんで影響云々はそれだけではなんともいえない。
また、この映画では32年の映画『猟奇島』がしつこく出てくる。その『猟奇島』と「アリバイのダイヤル」・「断たれた音」という邦題を並べただけでは何の類似点も見れない。しかし、その原題はそれぞれ"The Most Dangerous Game"と"The Most Crucial Game"・"The Most Dangerous Match"であり、後の二つは『刑事コロンボ』のサブタイトルである。ちなみにアメリカ大陸を発見したクリストファー・コロンブスのコロンブスをイタリア読みするとコロンボであり、トスキもそれを演じたマークラファロもイタリア系である。この映画は現実にはコロンボの不在も語ってると思う。
ついでに言うと松田優作主演『もっとも危険なゲーム』に小池朝雄が出演していることがどういう意味があるのか解らないが、彼が『コロンボ』のピーター・フォークや『フレンチ・コネクション』ジーン・ハックマンの声を当ててるのは偶然だとは思えない。
この字幕どーなんだろ
僕のあまりにも拙い英語力をおもいっきり棚上げしていうけど、こらこらあんたが審査員かよ!といっせいに突っ込みを受けていたおばちゃんとは違って今回の僕の違和感は字幕担当の杉山緑さんのせいというわけではないという気がする。
例えば、グレイスミスの職業“cartoonist”が「漫画家」や「挿絵画家」ではなく、イラストレーターだったこと。ろくに新聞も読んだことがなく、新聞に「ヒトコマ漫画」が載ってることを知らなさそうな、今の日本の観客に向かって、「漫画家」と訳したら場合、小林よしのりとか江川達也とか(略)を思い浮かべられてしまいそうなんで”しょうがない”と思う。上司にダメだし食らってたシーン等を「見れば解るやろ」と言ってもいけないような気がする。
軍の支給品のウィング・ブーツとの関連で語られる“crew cut”を「短髪」と訳すのもしようがないことだ。日本語において「クルーカット」なんぞ「慎太郎狩り刈り」同様の「死語」に違いない。
あと、これは定着しまくってるので、彼女のせいでは全くないのだが“scorpio”は"さそり"ではなく、"さそり座"だろう。Zodiac(黄道十二宮)をもじって命名され、英語の“scorpion”ではないのだから。
フィンチャーの心のドラゴン
『ファイトクラブ』で李小龍原理主義的な一面を見せたフィンチャーである。数ある殺人鬼の中からゾディアックを選んだのも、桑港がブルース・リー師祖の生誕地であるからに違いない。だからこそ、冒頭に「新世界Ⅱ超級市場」って看板が印象的な映り方をしているのだ。
シリアルキラーといえば
ベリエッサ湖畔での被害者であるブライアン・ハーネルの顔が襲われている場面ではどことなくテッド・バンディぽかったのが、数年後の証言シーンではどこなく(バンディが捜査協力した)ゲイリー・リッジウェイぽくなってたのはなぜ?
大衆は敵
大衆の敵じゃなくて、やはり犯人がフォルクス・ワーゲンなどというミドルクラスな車の乗り主に対してむかついていたのは、それがナチが作った自動車だから・・・ではないはず。
(参考:『ナチスの発明』)
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