腐乱苦城乃怪物 山田VS小水

フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ [DVD]

フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ [DVD]

Furankenshutain no kaijû: Sanda tai Gaira (1966) - IMDb(The War of the Gargantuas (USA) )
さる映画サイトの感想BBSの『キル・ビル Vol.2 [DVD]』のスレッドでひともんちゃくおきそうになったことがあった。ブライド(ベアトリス)とエル・ドライバーを「サンダ対ガイラ」だとはしゃぐ内容が頻発したところ、この映画のファンが切れて「どこかの評論家が言い出したか知らんが、ちっとも似てない。見てもないくせに」といった内容の書き込みを行った。僕としてはどっちもやれやれと思ってなのだが、結局レスはつかなかいまんまだった。あーあ、である。まあ、はしゃいでたヤツはそんな書き込みなんか見もしてないんだろうなぁ、と納得したんだけどさ。
だったらなんで自分でレスつけなかったかというと、単にメンドくさかったから。だって、この発言に対する応答って長ーくなるじゃない。
でもって、5本1000円ビデオで『サンダ対ガイラ』を手に入れたので、この機会にちょこっと書いてみようかな、と。

どこかの評論家が言い出した

はい、これは間違ってる。言い出したのは当のクエンティン・タランティーノである。QTはブライドVSエルの戦いを『サンダVSガイラ』の米題『The War of the Gargantuas』をもじって「The War of the Blonde Gargantuas」と呼んでいた。当時いろんな雑誌やサイトでQTの発言「6フィートを越える大女が取っ組み合う、まるで『サンダ対ガイラ』だろ」が載っていて、それが批評板やブログで引用され、さらにその孫引きで発言する人間も多かったはずである。だから、そんな人たちは自信を持って
"だってQTが言ってんだもーん"
って言えなかったに違いない。

ちっとも似てない

でも、一番その人たちが反撃できなかった理由*1は「見てない」ことだったはずで。そこをつかれると何もいえない人が多かったじゃないかなと思う。
そもそも、その「The War of the Blonde Gargantuas」にして構想時点と実際の画面に映された内容が違っている。

これは映画史上最大の"泥仕合"にしたかったんだ」とタランティーノ。「武術による戦いなんてもんじゃない。"つかみあいのケンカだ"。聞くだけでエキサイティングだろ?ユマ・サーマンダリル・ハンナが殺し合いをするなんて。(略)日本の怪獣映画みたいだ。本当はユマとダリルに身長が60フィートになる薬を飲ませて、戦っているうちに街の半分を破壊しちゃう、っていうのがやりたかったんだ。
パンフレット プロダクション・ノート

だから、"QTが言ってんだもん"はこのことを踏まえてないと説得力がない。ま、それにこの映画のQTの発言(特にパイ・メイに関してなどは)はどこまでがホントなのか判んない部分もあったからね。

「どっちがサンダで、どっちがガイラ?」

たぶんこの問に答えられる人はいないだろう。でもって、「似てない!」と憤った人もそんな風に思ったに違いない。単に巨大怪獣2匹が戦えばサンダ対ガイラになるわけやないんじゃ、ぼけ!と。
確かに

フランケンシュタインの怪獣』の続編で、前作地中深く沈んでいた(または湖の底に消えていった)フランケンシュタインが、山と海に二分して登場する。人間を食べてしまう肉食のガイラ(弟)と前作のように優しいサンダ(兄)の対決を描いた作品。怪獣映画本来の恐怖感を凶暴なガイラによって満喫できる作品である。
『大特撮 日本特撮映画史』355頁 朝日ソノラマ '80

とか

人間を鷲掴みにして頭からむさぼり食い、服だけを吐き出すガイラは、その残酷描写によって久々に怪獣の恐ろしさを堪能させた。
モンスターパニック―超空想生物大百科 (Million mook―新映画宝庫)』178頁 大洋図書 '00

なんて解説読んだだけでも、ブライドVSエルにこんな「深み」や「凄さ」はないことは分かるはずで、似てない!には"ごもっとも"とというしかないのかもしれない。

でもさ、『サンダ対ガイラ』と『フランケンシュタイン』はどうなんよ

という話も出てくる。
劇中で何事もなく「フランケンシュタイン=怪獣」ってことになってるんだけど、スタッフは

フランケンシュタイン [DVD] FRT-275

フランケンシュタイン [DVD] FRT-275

フランケンシュタインの花嫁 [DVD] FRT-151

フランケンシュタインの花嫁 [DVD] FRT-151

見てるだろうけど、小説の
フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))

フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))


(『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』)
を読んでたか、というと怪しいよね。よくいわれることだけど、「フランケンシュタインの怪物」であって「フランケンシュタインという怪物」じゃないんだし。
本来の「フランケンシュタインの怪物」は『失楽園』『若きウェルテルの悩み』を耽読するようなインテリー少なくともジュンちゃんの愛読者よりは頭が良いのは確かであるわけね。その後のフンゴフンゴしか言わないのは明らかに
似てない!!わけでさ。
怪物くん 全曲集

怪物くん 全曲集

だいたい作者のシェリー(確か僕の高校生くらいの時はシェリー夫人と書かれていた)ってフルネームのMary Wollstonecraft Godwin Shelleyってことを分解するだけで一つのエントリーが出来上がるような人だからね。
Mary Wollstonecraftはいわゆる「フェミニズム」の先駆者で、父William Godwinは牧師出身のアナーキスト、でもって夫Percy Bysshe Shelleyは貴族で詩人で妻子持ち。そんでもって恋に落ちた二人は大陸へ駆け落ち→本妻自殺で正式結婚というような波乱万丈を画に描いたような人生。<<編集中>>

*1:するつもりだったらの話だけど