どの道すくわれない

猿の惑星 [DVD]

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けっ、タイラーの野郎ったら少しは謙虚ということを知らんのか。あと愛嬌とかさ。バカだよなぁ、も少し賢く振舞っていたら無駄に殴られたり、水かけられたりしなかったのに。
今の若者がみるとそう思うかもしれない。
しかし、このタイラーの姿は公民権運動や反政府運動の人間に当局がやったことを表現しているのである。だから、彼は若猿にこう声をかける。
「30以上を信じるな」*1
若き対抗文化の合言葉だ。だがしかし、彼らもいずれ30歳を迎えることになった。そうしたら彼らは口々にこう言った。
「30以下を信じるな」*2なんてことは解ってることだ。なら宗教は僕らを幸せにしたか。アメリカでは映画の中でもしつこく描かれる「進化論」の押さえ込みには前進が見られただろう。しかし、もう一つの「殺しあう性質」の抑止にはなっていないではないか。それどころか、その宗教がハイジャックした飛行機でビルに突っ込んだり、アフガンやイラクの子供たちの頭の上に雨のように爆弾を降らせたりしてる主体になっているのだから。
仮に「進化論」を捨てることで「殺し合い」に終止符が打てるのならば、それはそれでもしかしたらアリなのかもしれないのだが、どうにも兵器をその手から決して離そうとしないのでは話にならない。人類はさらに自分勝手だったわけだ。
この映画が作られた68年には人類は後戻りが出来たかもしれない。少なくとも「大量破壊兵器」が損得勘定の上で結局は「損」だと思えるような、人々の手にゆだねられていたからである。


はー。
よくこの第一作目こそバートンらしいなんてことが言われるが、バートンじゃなくても、どちらも救いにならないなんてことが解った上で重い話なんか作る気なんかしないだろう。まあそれ以上に重役たちが許すわけないだろうけど。


・・・なんて実はおっぱいの一つもでねーのに不満だったもんで。

*1:字幕では「大人を信じるな」であるが、例によってキモを伝えてない翻訳だといえよう。

*2:浜省みたいに「19のままさ」なんていう無邪気さは持ち得なかったからだ。)) おいおいかってだなー。 しかし、この自分勝手なところこそ、われわれ人類の本質なのかもしれない。この映画はそのことを教えてくれる。 「信仰と科学的正しさは矛盾しない」という信念の元、あの世界で両方を司るザイラス博士ははいう。 「様々な証拠が人間の破壊的な性質を証明している」 僕はここで非常に暗澹たる気持ちになった。なぜか。確かに科学(技術)は必ずしも人を幸せにするものではない((この映画が撮られた当時はその疑いはまだ少数意見であった。じゃなかったら万博なんかで日本中が盛り上がるなんてことはなかったはずだ。40年近くも経って、承知の上でやっている人たちもいるけど。