アブナいぼんやり…シャルロット・コルデーが暗殺者になった日
それにしてもフランスの田舎生まれの美しい処女より危なっかしいもんはないね。
途中まで読んだ
マラーを殺した女―暗殺の天使シャルロット・コルデ (中公文庫)
- 作者: 安達正勝
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シャルロットの声に関するミシュレ*1の言葉
銀の鈴のような響きを持つ、ほとんど子供のような声の調子の中によくあらわれていた。それを聞けば、声の持ち主が全きままであり、少しもおしゆがめらていないということがよくわかるのだった。(略)このように子供時代が長く続くというのはジャンヌ・ダルクの特質であり、彼女はいつまでも少女のままでけっして女になることはなかった
の「ジャンヌ」にまずニヤリなんだけど、これと著者の安達正勝のシャルロット評の「ぼんやり者」を加えると、この「暗殺の天使」シャルロット・コルデーって岩館真理子の作品の主人公(いしかわじゅんは岩館真理子を「美しいぼんやりとした精神」と云っている)のようでないかと思った。
シャルロットに圧倒的に欠けているのは対話能力=コミュニケーションスキルで、それが彼女をあそこまで駆り立てたといえるんだけど。それって「おいしい関係」〜「週末のメニュー」あたりの主人公の少女そのものである。安達はさらに
彼女がただのぼんやり者であればどうということもないのだけれども、決断力と実行力にあふれたぼんやり者だったので、彼女はそれだけ、いっそう危険な女性であった
といっているのだが、それってマジで「わたしが人魚になった日」のあの娘みたいではないか。
そんでもって、またまたやっかいなのが彼女が正真正銘の美形だということである。ジャンヌ・ダルクは生前の肖像画が一枚も残ってないので、あまりにもフィクショナルでファンタスティックに描かれているのだが、彼女の場合はしっかりとその姿が残っている。どーも彼女の美貌に魅せられた画家が思わず裁判中のシャルロットをスケッチしまったそうなんである(澁澤瀧彦『女のエピソード』はその辺が不正確である)。もう裁判官なんかエコヒーキしようとしておこられちゃったり(彼が叱責されている時間で画が完成したらしい)してるし、「後追い処刑」を熱望してホントにギロチンにかけられる野郎まで出てくる始末である。でも「肖像画ほどじゃない」という実家のお向かいの人の証言なんかもあるんで、多少は場の雰囲気のプラス分もあったようなんだけどね。
いやー、ホントに困った人である。
- 作者: 岩館真理子
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死刑執行人サンソン ―国王ルイ十六世の首を刎ねた男 (集英社新書)
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