「イニシエーション」という悪夢
『グラン・トリノ』の字幕では「テスト」と訳されていた「initiation」が気になっている。
IMDBの主人公のキャラクター紹介(http://www.imdb.com/character/ch0112769/bio)でも
After he catches Tao, a teenage Hmong neighbor, attempting to steal his 1972 Gran Torino as part of a gang initiation,he boy is forced by his tradition-oriented family to work for Kowalski in penance.
(強調僕)
てな風に使ってあるこの言葉の日本語訳が「テスト」でいいのかどうか。
ちなみにGoo辞書によれば
# 1. 加入(式)、入会(式)、入社(式)、入門(式)
# 2. 成年式、儀式、イニシエーション
# 3. 開始、始動、創業、創始
# 4. 手ほどき、手引き、伝授
# 5. 起爆
だけど、これは参考程度ってことで。
んで、あの「誤訳の女王」なっちおばちゃんだから!ですんじゃえばいいんだろうけど、彼女じゃなくとも訳しづらいことばだっただろう。かたーく訳せば「加入儀礼」。でも、いきなりこの言葉が字幕に出てきても観客も困るだろう*1。それに「イニシエーション」ってルビがふってあったり、そのまんまイニシエーションってなってても意味わかんない人が多いってことを考えたら「テスト」は妥当なのかな、と。
「意味がわかんない」んなら、まだ良い。なんか変な誤解があるともっと困るような気がする。
僕がこの「イニシエーション」という言葉を目や耳にし始めたのは
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そんで、その後10年くらいして、やたらとこの言葉をテレビや週刊誌で見たり聞いたり読んだりするようになった。「地下鉄サリン事件」のあとの「オウムフィーバー」の時だ。
↑の「FLASH増刊」の"オウム用語の基礎知識"でも辞書的・学術的な意味はすっとばして、オウム的用法だけが載ってている。こんなもんを根拠にするのはアレなんだけど、この時期のこの邦の人にとって「イニシエーション」は特異な意味を持つ新語だったはずなんである。で、多くの人はそんなことを忘れているだろうが、もし下手に覚えているやつがいたら*2と思うと、字幕に「イニシエーション」なんて言葉は使えないんじゃないんだろう、なんて考えてしまった。
たーだ、映画のあちこちに「カソリック」「アメリカン・ウェイ」「戦争」「漢」ってな「イニシエーション」と関わりの深いあれこれが散りばめられてるだけに・・・。
*1:前田とか福田とかの「批評ジャッジ」のアレどもも意味が分かんないだろうし
*2:Wikipediaに項目あるしね。オウム真理教の修行 - Wikipedia