1975年のハイボール

今回入手したのはKC版の1,2巻。

ネット上を眺めると傑作の一つみたいな紹介をされているけど、なんか違和感がある。まあこの作品を紹介しているサイトを運営している彼らは、それはそれは石森章太郎の大ファンの方々であるから、そのへん差し引かないといけないと思う。
僕の記憶の中で、当時の週刊少年マガジンの他の連載『三つ目がとおる』『うしろの百太郎』『空手バカ一代』『愛と誠』『紅の挑戦者』『釣キチ三平』『俺は鉄兵』などの中でそれほど目立った存在じゃなかったしね。
で、今回読んで思ったのは、特に『三つ目』と『百太郎』へのライバル意識は強かったようで、第1話「機械人ポルター・ガイストと呪いの赤い目」に

「(超能力の)専門家てのはつのだじろう手塚治虫か」なんてセリフがあるくらいなんだけど、どっちが人気があったかというと明らかであると思う。後、常にスルメを加えているのは『木枯らし紋次郎』、サブタイに毎回ついてる「酔いどれ事件帳」というのは『酔いどれ探偵街を行く (ハヤカワ・ミステリ文庫)』というより『酔いどれ探偵 (新潮文庫)』の影響かなと思われる*1んで、若干散らかった印象を持ってしまった。

でもである。石森を、そして当時のマガジンを代表するような傑作!じゃないからこその面白みを感じてしまうの紛れもないのもホントである。宿敵のポルター・ガイストがゴーストやショッカーのような巨大な組織ではなく、中学生(たとえが超能力をもった大天才だったとしても)ひとりなんてスケール感も嬉しい人には嬉しいだろう。また、拠点である探偵事務所が流行らない中華の2階なんてのも、コーヒーショップCOLやスナック「ゴン」をさらに貧乏くさくした感じだし。

でもって、案外実写化するとおもいしろいんじゃなかろーか。『ガッチャマン』ではなく『ヤッターマン』を選択した三池崇志監督に、どっかの山師が『サイボーグ009』の話を持って行った時の代案としてこれはあると思う。


ちなみにゲンはサントリーオールドをハイボールで飲んでません。

*1:ちなみに父と子で刑事で『おやこ刑事』を連想するけど、『ゲン』の方が先