ムロマチのオーケン

源道義は天竺には想いを寄せなかったんだろうな。

室町の王権―足利義満の王権簒奪計画 (中公新書)

室町の王権―足利義満の王権簒奪計画 (中公新書)


ということで

足利義満 消された日本国王 (光文社新書)

足利義満 消された日本国王 (光文社新書)

しょっぱなから金閣炎上!」(金閣寺じゃない)ってな挑発的な小見出しで、「朝鮮戦争」勃発とほほ同時期に起きた「金閣消失」を三島由紀夫司馬遼太郎という二人の(多くの人の「日本人」観に影響のある)大作家のあれこれを絡めながら

国宝金閣。その消失が朝鮮戦争勃発の数日後であったのは、偶然なのであろうが、あまりにも出来すぎた話である。なぜなら、初代「朝鮮国王」李成桂と同時期に、足利義満は「日本国王」だったからだ

と決めるなんて、とってもスリリングである。二人の作家を登場させたのも、上掲『室町の王権』が松本清張の問いから始まってることと関係しているのだろう。
そんでもって、著者自身が認めている通り、「確信犯的」(つまりはちーっとも悪いと思ってない)に脱線しまくるのだけど、それがちゃんと理解の助けとなってるー儒教的、東アジア的価値観入門書として成立してる(んだと思う)。

それにしてもAmazonのレビューに「夜郎自大」な人たちの批判(批判している人全部がそうだといってるわけではない)が載っているのだけど、彼らは朝貢体制に対する

最近の研究動向の支持する朝貢体制理解は、この体制の、当時の文脈における合理性を指摘する傾向にあります。朝貢体制とは「定められた儀礼の体系を守っている限り、緊張が必要以上に昂まることなく、とすればこの関係は、双方にとって軍事的に必要以上の負担がかからない、極めて安価な安全保障のための装置(茂木敏夫による定義)
戦争の日本近現代史 (講談社現代新書)』66頁

ってな部分をまるっきり無視してるか、現代にそれを持ち込むことの鬱陶しさを混同しているのじゃないだろうか。
まあ、たしかに作者の芸風は一見お行儀わるいし、体裁を気にする向きには不興を買うのも解る。
それに関していえば、「光文社新書」ではなく「カッパブックス」で出した方が良かったのかなぁとか思ったり・・・。

とか何とかエラソーなこといいながもら、ほとんど「理解」してないだろうから
ぼちぼち『室町の王権』『天皇誕生』『倭国の世界』などを読んでから、もいっかい読み直そうと思う。

※この本を読もうと思ったきっかけ「足利義満を消したのは誰か - 我が九条」。