ギギの腕輪のないアマゾンなんて

コーヒーの入ってないクリープ、小腸が入ってないコプチャンチョンゴルだ。
『パッチギlove&peace』(以下『L&P』)は、姉のキョンジャのカムアウト→芸能界パッチギのためにアマゾンに会うことができなくなった、その上アマゾンのおもちゃさえも買ってもらえないチャンス*1のために、ノーベル賞佐藤(藤井隆)がアマゾンの扮装*2をして現れるのだが、なんとあろうことかギギの腕輪をしてないのだ。
第1作『パッチギ』の主人公康介を演じた塩谷瞬がハリケンレッドであり、その導き手坂崎のオダギリジョー仮面ライダークウガだった、何てこと以上にアマゾンが毎日放送―NET(現テレビ朝日)とTBSとの"捻れ"解消のために放送期間が半年であったなどという"分断"の被害者(番組)であったこと、日本育ちではない日本人のライダーであるなんてことを考えれば、テーマに非常にフィットした題材であるのは誰のもにもあきらかなのに。やはり、この扱いには納得がいかない。
やっぱりギギの腕輪のないアマゾンなんて・・・
これに限らずなんだか『L&P』には『パッチギ』にあった芯がないような気がした。
前作はボーイ・ミーツ・ガール&ソングという1本びしっとしたそれがあって

ボーイ・ミーツ・ガール [DVD]

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*3
ギター弾き語りmini イムジン河/悲しくてやりきれない

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それに『ロミオとジュリエット』→『ウエスト・サイド物語 [DVD]』といった普遍的な(よくある)お話を「不良番長」シリーズ「BE−BOP」シリーズ『ガキ帝国 [DVD]』といった伝統的モブファイトで味付けた作品であった。そんな映画の記憶に満ち溢れていたからこそ、スクリーンにチラッと映る『女体の神秘』『猿の惑星』『バーバレラ』の看板が非常に多くのことを語っていた。しかし今回の『L&R』に映る看板やポスターは時代を合わせる以上の何かを訴えてなかった(ように僕には感じられた)。だから『ドラゴンへの道』を見終えたチャンスの「『怒りの鉄拳』は?』てな問いかけには困ってしまった。いやはや。

キョンジャが桃子っぽいこと

朝高の音楽室で初めて見たキョンジャは本当に可愛かった。あれだったら康介じゃなくても一瞬で恋に落ちるに決まってる、そんな満点の説得力があのときの沢尻エリカにはあった。奇跡だといってもいいくらいだ。
奇跡はそんなに起こるもんじゃない。それは前回その奇跡を見事にスクリーンに映し出し、今回も済州島パートを『友へ チング [DVD]』や『シルミド/SILMIDO [DVD]』の冒頭のようなヒリヒリした肌触り*4を再現した山本英夫でも難しかったに違いない。だからだろう、今回のキョンジャは沢尻より桃子(楊原京子・現松永)の面影のある女優をということで中村ゆりを選んでるような気がした。
でもってそれが(僕の思い過ごしである可能性が非常に高いのに)僕にはなぜだかしっくりした。というのも今回のキョンジャは前回のキョンジャと桃子を合わせたキャラクター何じゃないかと思えたから・・・いや、そう見えたからそう思ったのかも・・・あれ、よくわからなくなった。
※佐藤の部屋に貼ってある青山涼子*5の写真ってば、当時のGOROなんかのグラビアっていうより今の韓国女優のポートレイトっぽいだよなぁ。でも、なんかさぁ、「秘宝」ノインタビューを読むと、この辺の美術関係に関しては監督の意向というより助監督や美術部の仕業っぽいんよね。

フェアじゃない気がする愛と平和の物語

実は1974、5年という時代設定にちょっと不満を感じている。いや、その時代の描き方に不満を感じているという方がいいのもかも。
1974年 - Wikipedia
1975年 - Wikipedia
『パッチギ』のラスト間際それぞれのその後が語られる中で吉田(小出恵介)はゲバ棒を持って機動隊とチャンバラやっていたはずだ。
そういった流れから見るとこの間に

  • 海老原俊夫リンチ殺人
  • 連合赤軍事件
  • 連続企業爆破事件

などが起こってることにこの映画が口をつぐんでることはいかがなもんかと思う。前回何かのインタビューで監督は「殴りあうのはかまわんが、命の取り合いはいかん」という趣旨の発言をしていたはずである。だったら尺はそれほど使わずとも少しは言及しても良かったのではないかという気がする。いや、今回の映画には直接関わってくることではないと言われればそうなんだけど。


とか何とかナンクセつけてるけど、シネリーブルの1番スクリーンでぼろ泣きして、涙が止まるまで席を離れなかった人がいうこっちゃないね。
つうかさ、今回の一番の不満は前回に満タンだったDTテイストの欠如なんだよなぁ。

*1:徳山昌守ことホン・チャンスのパンチは良かったねー

*2:コスプレゆーな

*3:もしかしたら、今回は「ボーイ・ミーツ・ガール」の続編ともいえる『汚れた血』の"愛のないセックスはいかん"というのと関係あるかもしれん。ということは第3弾は『新橋の恋人』でキョンジャがサラリーマンとの結婚を真剣に悩むという話になるはずだ。

*4:香港ノワールかも

*5:涼子といえば電話を取る際の中村ゆりは『ちゅらさん』の国仲涼子っぽい