外山恒一は『ブラック・ブック』をどう観るか
ひとまず
- 作者: 外山恒一
- 出版社/メーカー: 不知火書房
- 発売日: 2005/01
- メディア: 単行本
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http://d.hatena.ne.jp/video/youtube/l2C9lv5t0yQ
で、そこで気になったのがバーホーベンの新作『ブラック・ブック』を彼がどう観るかということだった。
BLACK BOOK film
彼は主催サイト我々団の「ファシズム基本文献/ファシズム断層(アナキズム諸君へ)http://www.warewaredan.com/contents/danso.htmlにおいて、フェイバリット・ムービーとして
- 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
- 発売日: 2006/01/25
- メディア: DVD
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まずあの不思議なタッチに、「好戦的で不快」と直球の反応をする人間がそんなに「多い」とは思えなかったのだが、少し考え直して、確かに左翼はそれぐらい低レベルな批評をするだろうなとこれは納得した。しかしだからといって、「本当はこれは反戦のメッセージなんだ」という反論も、同じくらい低レベルである。どう考えても、あの映画に「反戦」のモチーフなどカケラもない。ファシズムを魅力的なものとして、明らかに肯定的に、喜々として描いている。
いや、確かにハインラインの原作『宇宙の戦士』はそうだろうが、バーホーベンはそれを茶化してるだけだ。なぜなら彼の生まれ故郷のオランダ、ハーグはナチに占領され破壊されたではないか、という反論があるかもしれない。
しかし、でもバーホーベンはその破壊を楽しんだのだ。
「ただエキサイティングだったね。子どもだったから自分や自分の家族だけは無傷だと信じていたし」
(略)
しかも、ハーグを破壊したのはナチではなく、連合軍だった。ドイツ軍がロンドンに打ち込むⅤ2ロケットの発射基地が近かったせいだ。アメリカの捕虜としてドレスデンで味方の爆撃を食らったカート・ヴォネガット・Jrのように、この体験はヴァーホーベンの世界観に影響を残した。
「善とか、悪とか、そんなもんは本当は実在しないんだ。ニーチェもそう言ってるだろう。
〈映画の見方〉がわかる本80年代アメリカ映画カルトムービー篇 ブレードランナーの未来世紀 (映画秘宝コレクション)
おおおお、ニーチェ。これは前掲サイトの「ファシズムとはおおよそこんな思想である」の次の部分に対応している。
ファシズムは、ニーチェとハイデガーを主要な参照先とする革命思想である。
もちろんすでに述べたように、マルクスもまた、否定的な参照先とされる。
そして何よりその文章の先には
ファシストは、ナショナリズムを360度ヒネって肯定する。
そもそもファシストは、故郷喪失者であり、即自的にアイデンティファイできるナショナリティを持たない
がある。バーホーベンこそ故郷喪失者に他ならないではないか。故郷オランダで一番の稼ぎ頭の映画監督であったのにもかかわらず、良識派のバッシングに終われるようにハリウッドに渡り、また数々の問題作を発し、ハリウッドにも居場所を亡くし、再びオランダで製作したのが『ブラック・ブック』である。
もし、この映画が凡百の「反ナチ」映画の範疇に留まるなら、外山の『SSP』評は丸っきりの間違いとなるだろうが、果たして・・・
僕がハピネットなら今すぐ外山に鑑賞券送るんだけどな。