バックシャン

こちらで"バックシャン"という言葉をひさかたぶりに目をした。

「バックシャン」って、昔の(大正〜昭和はじめの)エリート男性が女性を見る視線や、彼らのへんなエリート意識や共同体意識が反映されていて、とてもいやな言葉だ。

確かに。『昭和流行語辞典』*1によれば

シャン ドイツ語schön(美しい)からきた学生言葉。昭和初年から、響きのよさもあってか、次第に一般に用いられるようになった。とても美人を「トテシャン」、その逆を「ドテシャン」というふうに拡大解釈されることもあった。「バックシャン」(後姿美人)は今なお使われることもある。

という言葉なのだが、明治〜大正〜戦前までの先端な外国語であるドイツ語を学生が使い始めてるってことで「旧制」中学・高校のエリート意識がプンプン臭ってくるのは確かである。まあ彼等がそれをどれだけ意識していたかどうかは別として。
ただ、シャン単独とバックシャンとでは違ったニオイを漂わせているような気がする。「シャン」は確かにエリート層から発せられた言葉で厭味をともなってはいるものの、どうも自意識は阿蘇山のように高いくせに女性にどう接していいか分らないDTKの栗の花の匂いがしてくるのに対し、「バックシャン」には使用する人間の数が拡大するに従い、当初のいびつな儚さを損なっていた末に親父の臭いしかしない。
僕には「シャン」が備えていたかもしれない童貞の憧憬が「バックシャン」には微塵も感じられないのである。
やはり「バックシャン」は極めて失礼な言葉なのだ。
だから僕は使わないようにしよう。
※キーワードに登録されてた。あらら。消そうかな。

*1:グループ・昭和探検隊編著 三一新書 '87