華のある職人の技

魔界転生(下) 山田風太郎忍法帖(7) (講談社文庫)

魔界転生(下) 山田風太郎忍法帖(7) (講談社文庫)

凄い、面白い。
巻末の日下三蔵氏の[忍法帖雑学口座6]でも触れられているが、主人公の初登場が230頁目ってのは余程の自信があってのことだろう。しかも「一人寝そべってる人間があった」なんていうあっさりとした登場の仕方。
この時代の新聞小説の読者って我慢強かったんだねー。あと、今より日本人全体の知的レベルはずーうっと上だったんだろうね。例えば由井正雪の登場時の名乗りが「拙者(略)由井民部之介と申す浪人者でござるが」という風に「分る人には分る」言葉選びをしてあったりする。
それから感心したのが無茶苦茶書いているようで、大きく「史実」を破壊しない構成になっているところ。後、「強さのインフレ・スパイラル」を戒めている点も好ましい。十兵衛にしても「超人的」であっても決して「超人」としては描いておらず、そのブレーキの踏み方がまことに絶妙である。
まさに「忍法帖の最高傑作」の名に相応しい作品だった。

でもって

下巻を読み終わって余韻に浸る暇もなく

魔界転生 (講談社漫画文庫)

魔界転生 (講談社漫画文庫)

に突入。
・・・!・・・
なんや、これは。
いきなり上で誉めてた部分をぜーんぶブッチギリ。のっけフルコン・セメントの連続で"強さ"はペセタ並みの極度のインフレ状態。
仮にも伴天連の天草四郎に「成仏しろ!」なんていうメンタリティは完全にどうにかしてるし、徳川時代に『手天童子』と『バイオレンスジャック』やっぱり『デビルマン』・・・いやはやなんとも・・・なんてのは完全にダイナミック(プロ)ワールド!思わず
永井豪世紀末悪魔事典

永井豪世紀末悪魔事典

を本棚から引っ張り出してしまった。
こっちもサイコー!
誰か今すぐPJかスピにこの本送れ!



そうれはそうと・・・ホントに山風先生はこれに何にも言わなかったのか。