TOKYO ROSE/AKINA

世間では「82年組」といえば、深田恭子加藤あい松本莉緒もしくは酒鬼薔薇聖斗ネオむぎ茶の82年生まれのことのことをさすようだが、やはり僕にとっては中森明菜小泉今日子・しぶガキ隊・松本伊代等の82年デビュー組のこととなる。
そういえばその中に「シャンプー」なんていう女性デュオもいたようだが記憶は定かではない。
その82年のとある朝の福岡県立F高校2年×組(男子クラス)は異様な雰囲気に包まれていた。昨晩発表された「レコード大賞新人賞」に中森明菜小泉今日子がノミネートされていなかったからだ。
その日いつもより図らずも(示し合わしたわけでもなく)早く登校して来てしまった僕とK馬は、クラスの堀ちえみ松本伊代ファンの椅子を机の上に乗せるという、今考えるとだからどうしたという阿保な行動をとった。とにかく何かをせずに入られなかったのだ。
次々と登校するクラスメイトたち、中には目を腫らせているヤツまでいた。よほど悔しかったらしい。大半のヤツは別にどうってことはなくしていたんだけど、ぼく等は平静ではいられなかった。ファンが言い争っても何が解決する訳でもないんだが何かをしなくてはならない心境だったんだろう。*1
クラスの良心Sの説得によりどうにか平静を取り戻した。
そして、僕らはなぜTBSはかのような愚挙に出たかを話し合った。
結論は中森明菜小泉今日子は「スタ誕」出身であり日テレとTBSの面子の問題、それに事務所のパワーバランスということであった。
しぶガキ隊/ジャニーズ・早見優/サン・ミュージック・堀ちえみ/ホリプロ石川秀美/芸映松本伊代/ボンドという当時のメジャー事務所が揃っって勝負をかけたということであり、またしぶガキは『仙八』、松本伊代は「たのきん全力投球」とTBSの威信もかかっていたのだろう。
では二人は事務所はというと中森明菜研音小泉今日子はバーニングである。今の若い人間はこの二つの事務所がなぜジャニーズ以外の事務所に屈するのかが理解できないだろうが、当時の研音はちっちゃな事務所であり、バーニングは細川たかしの「大賞」のために、「新人賞」はバーターで譲ったのではないかとも言われた...って僕らが言ってたんだけど。
その週末怒りの日テレは舐めんなとばかり「明菜ときょんきょんの特番」を急遽放送し、「売上のNO1の明菜とアイドルNO1のきょんきょん」を猛烈にアピールした。僕はそこまでいくと何だかなあでもうどうでも良くなっていた。
その年の最期の「ベスト10」の1位は「セカンド・ラブ」であった。黒柳徹子の心ない言葉にもけなげな返答する中森明菜に「この人は本当にいい娘なんだんあ」と思った。
その後中森明菜小泉今日子は「日本レコード大賞新人賞」の意義を完全に粉砕することになる様な快進撃を続けたことは30より上の人はみんな知っていることだろう。
その後、大学に入るとアイドルよりロックに興味の大半を奪われることになり、その後の中森明菜はTVで見るだけの人と化していった。
でもって一昨年ワゴンセールで女声をあさるということをやっていた頃に出あったのが、見出しの「Tokyo Rose/AKINA」である。
ブライアン・セッツァーの手によるこの曲は、マジで本物と本物の出会いによる、きしんだテンションが感じられる佳曲である。
http://wagamamakorin.client.jp/tokyorose.html
↑のようにずっと明菜や歌謡曲をおいかけてきた人はおそらくこの曲の凄さは感じきれないかもしれない。この曲は何の因果かできてしまったシロモノなのであり、歌謡界の稀代の歌姫「中森明菜」の文脈では計り知れないものなのだ。そう、歌謡曲としては失敗かもしれない曲。だからこそのアーティスト名「AKINA」。中森明菜でリリースするのには二の足を踏むようなやばさがこの曲のキモなのだ。
ベストコレクションに入っているようだが、CDシングルで見つけたら買うってので構わないと思う。絶対損はしないことを保証する。*2

*1:最狂超プロレスファン烈伝 1 (KCデラックス)』参照

*2:ちなみに中森明菜で一番思い出深い曲は「あなたのポートレート」。野村誠一が撮ったデビュー当時の明菜の愛らしさは初期あいぼんや松本恵とかと同じ地平に立っていると思う。みんな変っちゃったねえ。