くさかんむりのひめさまたち
例えば『無敵のライセンス―青春サバイバル・マニュアル (コミックパス)』の巻頭ピンナップ。
一見『桜の園』の一場面のようだけど、実は歩いているのは叶小夜子と浅井由似子。
で、なるほど、である。
吉田秋生が「アポストロフィーS」で感じた「ピン!」が女と男のもどかしさやどうにもならなさ(でも、どうにかなったりして)なんだろう。恋しい愛しいだけじゃなく、友情ってのも含めて(その意味じゃ『海街』で緒方弟とすずの友情はあるのかないのかとかも)。でも、彼女のマンガ家として血肉になったのは「草花」を描くということなんじゃ。
あなたと/接吻いたしましょう
桜草が咲いたなら/李の花が咲いたなら
梨の花も持ちましょう/茱萸の花もそえましょう薔薇が咲いては遅すぎる/トゲが二人をさすでしょう
香りがあなたを殺すでしょう
薔薇の花の咲く前に/椿の一枝髪にそえあなたと接吻いたしましょう
秋の萩
やがて柿が実り冬には椿
そして春の訪れを告げる梅
今年もたくさん実をつけてくれるでしょうか
このように草花の名前(それも漢字で)が少年誌や劇画誌で連発されることはないだろう。クロスオーバーな青年誌といえども、舞台設定(植物園だとか、農業大学だとか)を必要とするだろう。これをポンとモノローグ(ナレーション)として書け、そして、ことあるごとに草花の絵を描こうとするところが、吉田を少女マンガ家たらしめてるような気がする。
そして、なおかつそのエピソードのタイトルに「花底蛇」をつけ、沈丁花の下に青大将を出し*1、何事もなかったのように「美しいもの下には恐ろしいものが潜んでいるって中国の故事なんだって」と登場人物にさらっと言わせるところも、そう。タイトルといえば、「桜の花の満開の下」でさらに彼女は花の下には蛇以外のものも潜んでいることをほのかにしめす*2。これが撫子の底にワニがいたら・・・
で、たぶん彼女たち少女マンガ家は自分たちが帯びている冠が「花」でなく「草」だってんの自覚してんのじゃないか。
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そして、吉田秋生は思ってるんだ。なんで私じゃなくて岡崎京子がvol2なのよ!って
。手足が長くて目がおっきぃのが少女マンガじゃないんだってばって。
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