なんかこう導かれるように

この二人は結婚しても、赤井さん・桃田さんと呼び合いそう

『アマリリス』の桃田さんは(下の)名前で呼ばれない。女性の同僚や友だちからも「桃田」だ。友だちはみなアキコだのリカコだのと読んでるのに。これは赤井さんもいっしょで、義母からもであった頃(まあ教師と生徒だから)のまま「赤井くん」だ。ユミちゃんなんかつきあったその人に下の名呼び捨てしそうなのにね。
おそらくこの縛りがこの「すれ違いラブコメディ」に妙なリアリティを生んでる要因の一つのようだ。
さらに「バイトさん」の存在がそれに拍車をかけている。彼女は名前を尋ねられても、「わたしはバイトだからバイトさんで」なんていうのだが、一見この不自然な言動も最後にちゃんと種明かしがあって、彼女は自分の流麗で華美な氏名に絶えず「名前負け」を感じて生きてきたんだった。
逆に平凡な(といってもあんまり実際お目にかからない)下の名をもつ桃田さんと赤井くんが結婚式をさかいにお互いをどう呼び合うかが気になる。まあ日本語には「おい/あなた」だの、子供が出来りゃ「お母さん/お父さん」や「ママ/パパ」ってな「便利」なもんがあるんだけど、この二人にはいつまでも「桃田さん/赤井さん」と呼びあってほしいような気がする。
それが桃田さんの氏名が結婚によって「アマリリス*1になったとしても。

アマリリス 5 (YOUNG YOUコミックス)

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*2
※主要な登場人物にユミちゃんがいるからじゃないけど、相手をどう呼ぶかを丁寧に描いた作品として、吉行由実監督『年上のOL 悩ましい舌使い』を思い出した。

さて、本作『年上のOL 悩ましい舌使い』はすがすがしいまでの等身大で、まっとうな青春恋愛映画である。かつて成人映画というのは普通の「TVドラマや一般映画でトートツに打ち切られるラヴ・シーンの続きがついている」ものだとうまく書いた人がいて(『銀星倶楽部19 特集桃色映画天国1980-1994』のあとがき)、この作品などはまさにそういう素直な作り方がなされている。
年上のOL 悩ましい舌使い(オフィス吉行/オーピー映画2005 吉行由実監督) - エイガ・デイズ

いしかわじゅんが『漫画の時間』で岩館真理子を称した「美しいぼんやり」ってこのときの谷川彩にもあてはまるだろうし。

やっと読んだ『東方見聞録』

でも、いままで読まなくて良かったような気がする。
というのも、買ったときに読んでも、藤本由香里さんの解説

私は以前から、「ジオラマボーイ パノラマガール」に出てくる「でもうちのおねいちゃん、スレてるくせに夜ねるマエに『バナナブレッドのプディング』必ず読むヒトだからさー」というセリフが岡崎京子の本質をついてるような気がして仕方がないのだが、(中略)二人が行く場所の中に「井の頭公園」が含まれているのも偶然ではないように思える

だとか、第7話の「国立市」でのきみどりのセリフ

大島弓子センセのまんがに出てくるよーなお家がいっぱーい。

なんてのの意味がちーっとも分からなかったからだ。
なるほど、大島弓子岡崎京子吉田アミは太い糸でつながってるんだね。
キーワードは「少女地獄(Mädchelter Skelter)」

てこって「バナナ〜」を読み返しまーす。

東方見聞録―市中恋愛観察学講座

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大島弓子セレクション セブンストーリーズ

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サマースプリング [文化系女子叢書1]

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*1:バラでもチューリップでもいいんだけど

*2:この表紙って黒ちゃんとバイトさんにも見れるよね