畑尚子真っ向勝負

なんかあまりにホームドラマ臭いんで一部で『あんみつ姫』だとか「渡る世間は鬼ばかり、退治てくれよう」だとか言われてるNHK大河ドラマ篤姫』。
で、近辺の本屋の「篤姫コーナー」で思いっきりシカトされてる

幕末の大奥―天璋院と薩摩藩 (岩波新書)

幕末の大奥―天璋院と薩摩藩 (岩波新書)

まあ扱いに困る岩波新書だってこともあるだろうけど、この本があのドラマを楽しく視るのに向いてないのは確かかも。
なんせ帯にしてから

本書の執筆も半ばに近づくと、自分なりの天璋院像が出来上がり…宮尾登美子氏の小説に描かれたものは偶像であったことに気づいた。彼女は自己主張のはっきりした性格で、自分の判断で行動するタイプである。上昇志向が強く、見栄っ張りである。斉彬の実子として鶴丸城に入ったときは、小さく拳を握りしめて「やった」と言ったかも知れない。家定の御台所になると決まったときは、人の見ていないところで小躍りしたかもしれない(「あとがき」より)

である。そんでもってのっけから

江戸時代は男女にかかわらず成長とともに名前が変わる。名前には通称と諱(実名)があり、人からは通称で呼ばれた。身分が高い人ほど他人から諱で呼ばれることは少ない。大名は官職や受領名で呼ばれる

と一昨日の様つけりゃ諱呼び放題にもツッコミが入る*1なんて有様。
まあ勝負させたがってるのは岩波新書編集部なんだろうけどね。
これじゃドラマを見るたびにいちいちツッコミをいれていくしかないかというとそうではなく、あれはあれ、これはこれということを思えばいいだけの話。著者もとっかかりは『新装版 天璋院篤姫(上) (講談社文庫)』だってこといってるし*2
一冊でなんか判った気になるのを「入門書」だと思ってる人*3には不満だろうし、学術論文を求めてる人には物足りないだろうけど、「大奥」を知るきっかけには充分なる本だと思う。
まあその部分では

江戸奥女中物語 (講談社現代新書)

江戸奥女中物語 (講談社現代新書)

からあんまり上乗せはないんだけど。


でも、いつか彼女が「姉小路」の本書いたら読見たいと思った。

*1:これはエセナショナリスト愛子様呼ばわりもそうだね

*2:その考証の高さも褒めてある

*3:アマゾンのレビューにも二人いる