メガロポリストーキョー
何の因果か激写文庫・『高樹沙耶 メガロポリス・トーキョー』がウソっというような価格で手にはいる。
これは高樹沙耶という女優のとても美しい瞬間が焼き付けられいると同時に、「益戸育江」にとっての不幸が透けて見える写真集である。
なぜなら、その美しさは野田秀樹の解説の言葉「彼女は東京生まれだと思っていた。(略)彼女には<東京>にハマる何かがあるかもしれない」に集約される誤解というフィルター越しでのみ視認可能という捻じれたものに過ぎないからだ。
『沙耶のいる透視図』*1で妖しくデビューしてしまい、僕のようなものの誤解に基づくアンニュイ姫というラブコールに、その後彼女は戸惑い、あからさまな嫌悪を催すようになる。
そもそもこの写真集のプロフィールに「趣味・スキューバ」とあるではないか。しかし、僕らは無視し、あくまでも彼女に「37.2℃朝」を求め続けた。*2
僕らが感じたある種の裏切りが実は「表」だったというのに認めるのにはしばらく時間がかかった。そう、あの日に焼け、潜水しながらイルカ*3の声を聞くことがカムアウトだと識ったとき、僕らには「現在の」高樹沙耶から目を背けるしか手段が無かった。
しかし、写真は残る。僕らと「高樹沙耶」のつらくて虚ろではあるが、とても幸せな時間の記憶として。*4